石川県医療労働組合連合会からのお知らせ
新型コロナウイルス感染の爆発的な拡大で都内の医療ひっ迫状況はどうなっているのか、そして、無為無策の感染対策を続け、国民のいのちを危険な状況に置いてしまっている政治に対して強く抗議し、抜本的な対策改善と強化を求める声明
2021年8月4日
日本医療労働組合連合会
中央執行委員長 佐々木悦子
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なほど広がっています。東京都内の感染者は、先日ついに1日4千人を超えました。そして全国の感染者数も7月末から8月にかけて4日連続で1万人を超すなど、「感染爆発」と言っても良いくらいの深刻な状況となっています。私たちは東京オリンピックが感染拡大の引き金になることを強く危惧していましたが、残念ながら危惧していたことが現実となってしまっています。
この事態を踏まえて、日本医労連として、感染爆発と医療のひっ迫、そして「医療崩壊」が始まっている東京都内の医療機関の現状を聞き取りましたので、まずはその実態を報告します。
* 700床の公的病院では、8/2現在、重症病床8床が満床、軽症~中等症病床44床は80%埋まっており、この1週間で患者数は急上昇している。
* 500床の公立病院、32床中30床使用中で、ECMOはすべて稼働中のため、いま現在重症者は転送している。
* 830床の公立病院、8月から追加で一般病棟をコロナ病棟に転用するため、一般診療に影響が大きく出てしまっている。いま現在、120床の中等症病床が100床以上稼働している。退院出てもその日の午後にはすぐ次の入院が入ってくるような状態。
* 400床の公的病院、18床だったコロナ病床を都の要請を受け26床に増やしたが、7月最終週の時点で26床中25床使用で、満床状態。また、受け入れ病床を増やしてもスタッフは増えていないため、業務過重になっている。
* 250床の公的病院、コロナ病床は12床確保しているが、医師・看護師が足りないため、使用上限を7床に制限している。
* 230床の公的病院、同系列の全国の病院から看護師応援派遣を受け、計78床のコロナ病床を確保しているが、すでに3割埋まり、入退院が激しい状況なので、すぐに使用率は上がると思う。
* 400床の公的病院、24床の中等症受け入れ病床が90%以上の稼働率。中等症を受け入れているが、悪化して高流量の酸素療法が必要となるケースが多発。若い入院患者が多くなっているため、急変して病状悪化から救命という、緊張感が続いている。(←中等症でも入院時に急変対応が求められているのに、中等症までは自宅療養と方針を出した政府の考えは全くド素人の危険極まりない判断と思わざるを得ない。)
* 4つの国立病院では、7/28時点でコロナ病床使用率60~80%に上がってきているため、すぐに満床になってしまう勢い。
* 都内4つの大学病院からは、コロナ感染患者も受け入れた上に、要請を受け、それぞれがオリンピックの医療スタッフを派遣しているため、看護師の夜勤回数は大幅に増え、休みも取れず、職員は疲弊している。(おそらく、医療を管轄している厚労省からは、オリンピックへの看護師派遣を医療機関に要請できないと考え、オリンピック担当官庁である文科省が管轄する私立の大学病院に医療スタッフの派遣を要請したと憶測される。オリンピック開催で国民の医療に悪影響を与えないと言っていたのに、結果として一般医療の制限がかかっており、医療現場からは強い怒りがこみあげている。)
* 民間の診療所、保健所からの依頼でPCR検査実施しているが、先日の検査結果では、7人中7人が陽性という驚愕の事態になっている。
* 最後に、400床の公的病院のコロナ病棟で働く看護師から寄せられたメッセージを紹介します。
「今回は今までとは違う波になっています。20〜40代の若年層が感染して容易に重症化しています。この場合、ほぼ全患者が気管挿管やエクモの対象となってしまっています。政府は『10歳未満の感染は明確に増えている状況ではない。あっても個別に対応できていると思う』としているようですが、20~40歳代の感染の拡大は、家庭内感染へとつながっています。つまり親から子への感染リスクの可能性が高まっているということです。家庭内感染とはほぼすべての家族が感染します。例えば夫が感染し、入院する。妻は子どもたちの面倒見ている。数日後、妻も感染していることがわかるが、38~39度の熱を出しながら子どもの世話している。小さい子どもがいるご家庭では家庭内で隔離することはできず、当然子どもたちにも感染していく。運よく、子どもに感染しなかったとしても、その子どもの面倒を観てくれる自分の親に影響していきます。ワクチンを打っていたとしても感染しないわけではないので、また65歳以上にも感染するリスクが上がります。子どもへの感染は休校や行事の変更ということだけで済む話ではなく、家庭崩壊を招きます。そのことをもっと政府は理解してほしい。
国民の多くも、医療が逼迫してるっていう本当の意味がわかってないように感じます。感染しても自分の入院できる病院がないという恐ろしさを想像できてないと思います。自宅で苦しみ亡くなる可能性が今、誰しもに迫ってるっていうことをもっと政府は危機的にとらえて国民に警鐘を鳴らしてほしい。想像力が欠如している人が多いと思います。またそうさせているのは日本政府ではないでしょうか。オリンピックをしながら緊急事態宣言をしても意味がないですし、今や緊急事態宣言自体機能してないのに見て見ぬふりをして、やり過ごそうとしているようにしか見えません。もっと強い政策が必要と思います。」
このような医療崩壊が始まっている状況を踏まえて、日本医労連として訴えたいことを、以下に述べます。
感染拡大を不安視する私たち医療・介護労働者や多くの国民の声にまともに向き合うことなく、オリンピックが開催(8月8日閉会)されました。オリンピックで最高のパフォーマンスを発揮すべく努力を続けてきた選手たちの必死に奮闘する姿は、観ているものに多くの感動や勇気を与えています。そのこと事態に、私たちは何ら異議を差し挟むものではありませ ん。
しかし、世界中から数万人の関係者が非常事態宣言下の東京都に参集し、オリンピック開催が感染爆発と医療崩壊につながってしまう危険性が極めて高いために、私たちはオリンピック開催の中止または延期を求めてきました。事実、政府による新型コロナの感染対策があまりにずさんで、オリンピック開会寸前の7月にはワクチンも予定通り供給されず、第5波の感染拡大が進む中で、オリンピックは開会式を迎えることになりました。そうしたことから、開催についても様々な意見がぶつかり、競技の観戦を楽しみにしていた人にとっても、ひっ迫する医療現場で働く医師・看護師にとっても、こころの底から楽しみにくい状況となりました。私たちは、感染拡大や医療現場の状況から考えれば、国民のいのちをまもるためにも、政府はいまからでも中止の判断を検討すべきだと考えます。
これまで菅首相は、オリンピック開催中止の検討を求める野党国会議員からの質問に対し、「国民の命と安全を守るのは私の責務だ。守れなくなったら(五輪を)やらないのは当然」と答弁しています。では、いまの国内の状況は、国民のいのちと安全を守れているのでしょうか。感染者の中心世代は20代~40代となり、無症状な感染者がさらなる感染拡大を引き起こしています。医療機関等で発熱者に実施するPCR検査の陽性率は4割を超えているとの報告もあります。患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」も7月19日~25日の1週間に全国52の消防で2202件と前週より43%増加し、助かるはずの命も助けられない状況も広がっています。1日の感染者数が東京都では4千人を超え、全国で1万人を超えてしまいました。首都圏中心にコロナ対応の病床はすでに満床に近づき、医療崩壊が目前に迫ってしまっています。東京都内の陽性者の自宅療養者と入院・療養施設待機者を合わせると1万人を超えています。肺炎症状が出ていても自宅療養とされている感染者が数多くいて、重症化につながる危険性が広がっています。そしてそのような状況下、菅内閣は、今度は重症者以外は自宅療養させるような方針を打ち出し、医療関係者からも国民世論からも強い非難を受けました。国民のいのちを守る責任をまるで考えていない所業としか思えません。
いま、緊急にしっかりとした対策を取らないと大変なことになります。菅首相が、「国民の命と安全を守るのは私の責務だ。」と言うのであれば、そのために何を行うのかを、明確に示して実行に移すことが緊急に求められています。医療崩壊が起き、入院ベッドが埋まってしまい、適切な医療を受けられれば助かったはずのいのちが失われた時、責任を果たすと言っても取り返しがつかないのです。
すでに連日、オリンピック関係者から二桁以上の感染者が報告されています。すなわち、最初から破綻している「バブル方式」などは修正し、オリンピック関係者の強い行動制限と、徹底した検査実施、陽性者の隔離・治療などをもっと徹底すべきです。東京都における4度目の緊急事態宣言は、ほとんど効果が出ていません。都民に「ステイホーム」をお願いするのであれば、その間の生活保障をしっかりと行い、短期間で感染拡大を収束させる努力をすべきです。飲食店にしっかりとした経済的保障を行ったうえで休業を要請すべきです。コロナ感染患者の入院対応をしていない医療機関や介護施設に対しても、しっかりと減収補填を行い、経営を支えることで、医療・介護従事者の処遇を守り改善し、人員を増やして提供体制の拡充を図るべきです。若年層の人たちも気軽に無料でPCR検査や抗原検査を受けられるような、大規模な検査体制の拡充を行うべきです。ワクチン確保に責任を果たすとともに、すでに国内にあるワクチンの管理を国が責任もって行い、感染拡大の恐れの強い地域から先行して接種率を上げるべきです。
これまでの政府の感染対策は、オリンピックを延期したこの一年の間にも、感染拡大と緊急事態宣言を繰り返して、とりわけ飲食関係・観光関係、文化・芸術・スポーツ関係、そして医療現場を疲弊させ、オリンピック期間中に過去最大の感染拡大・医療崩壊を引き起こしています。国民に強い自粛を求めながら、一方で世界最大の国際イベントを行っていれば、多くの国民の意識の中に、「緊急事態」などの感覚はマヒするに決まっています。ワクチンが決め手と繰り返す菅首相は、7月までに65歳以上の接種を完了させると言い、9月までに全国民のワクチン接種を完了すると宣言していたことが無理であった責任をどう取るつもりなのでしょう。場当たり的、後追い的な対応は、もうやめてほしいと強く感じます。すでに1年半以上もコロナ禍の中で踏ん張ってきた医療従事者には、すでに限界が近づいています。使命感と責任感で持たせてきた気力は、今後さらに医療崩壊に直面してしまった時には、虚無感に押しつぶされてしまうことは容易に想像できます。
いま、迅速で的確なコロナ禍からの克服に向かう、真剣な政治責任を果たしてもらいたいと繰り返し強く訴えます。飲食店などに充分な補償をして緊急事態宣言を全国規模で徹底してください。若い世代のワクチン接種が進むように責任をもってワクチン確保をしてください。PCR検査を大規模・無料で行い、感染対策を徹底してください。医療がひっ迫しないように、すべての医療機関に財政支援をしてください。医療現場で疲弊した、それでも頑張る医師・看護師など医療従事者の声を聞いてください。そして、感染拡大の状況、医療のひっ迫を踏まえて、菅首相の判断でオリンピックを中止して、国民に対して感染を止める行動を強く呼びかけてください。それができないのであれば、政治に携わる場から退場すべきです。われわれ医療・介護現場を必死に支えてきた者たちの意見も聞かず、専門家からの忠告にも耳を貸さず、中止や延期を求める過半数の世論にも向き合わず、東京オリンピック開催に固執して、多くの救えるいのちを無にした政治的責任を取ることを私たちは強く求めます。
以上が、政府に向けた、日本医労連からの強いメッセージです。政府には真剣に受け止めて対策をすぐにでも行っていただきたいと要請します。
そして、報道関係の皆様に対してお願いがあります。ぜひ私たち日本医労連からのメッセージを報道してください。そして多くの国民の皆様には、危険な事態を理解していただき、政府の姿勢を正すための世論につなげていただきたいと心からお願いします。
以上